認知症の予防方法として注目が集まっているのが回想法です。これはもともと1960年代にアメリカの精神科医によって唱えられた治療法です。自身の過去について本人に語らせることで精神安定を図るというものですが、それが脳に良い刺激を与えて認知症の改善にも効果があるとされています。日本でも介護現場に早々に導入されましたが、当初はうつ病の治療法という位置づけでした。徐々に年数を経るたびに認知症療法の1つとして位置づけられるようになったのです。現在は改善だけでなく予防方法としても効果があるとされ、病院をはじめとする医療機関や介護施設で活用されている状況です。
回想法の効果としてはさまざまなものがあります。1つは精神的に落ち着くようになることです。過去の懐かしい思い出を語ることで気持ちが楽しくなり、穏やかになる傾向があります。もう1つが認知症の改善と予防です。回想法は思い出すだけでなく、人に語る行為もあります。人に何かを説明することは脳に大きな刺激を与えることになります。実際に脳を調べてみると、人に話すときは脳の血流が増えているのです。
ちなみに、回想法には種類があります。マンツーマンで行う「個人回想法」と複数人で行う「グループ回想法」です。コミュニケーションをとるのが苦手な人や人見知りの人にはグループ回想法ではなく、個人回想法が望ましいでしょう。事前に触れられたくない過去があるか、あるならそれはどのような話題かを調べておくことが大切です。